2021年10月から、発信のサイトを、ブログからnoteに変更しました。note(https://note.com/koichinishi/)のほうをお訪ねください。
西口光一
日本語教育、日本語教育学、第二言語教育学、言語心理学などについて書いています。 □以下のラベルは連載記事です。→ ・基礎日本語教育の授業実践を考える ・言語についてのオートポイエーシスの視点 ・現象学から人間科学へ ・哲学のタネ明かしと対話原理 ・日本語教育実践の再生 ─ NEJとNIJ
2021年10月4日月曜日
2021年8月2日月曜日
オンライン日本語レッスンのすすめ(210729facebook発信)
オンライン日本語教育(オンライン日本語レッスン)の一提案 ─ 反転指導のすすめ
新・日本語教育セミナー(202109から):『新次元の日本語教育の理論と企画と実践』と「表現活動主導の日本語教育」
新・日本語教育セミナー:表現活動の日本語教育の理論と企画と原理
ことば学カフェ:『第二言語教育のためのことば学』(202109から)
9月からのことば学カフェのお誘い
2021年7月29日木曜日
オンライン日本語教育(オンライン日本語レッスン)の一提案 ─ 反転指導のすすめ
オンライン日本語教育(オンライン日本語レッスン)の一提案 ─ 反転指導のすすめ
新・日本語教育セミナー:表現活動の日本語教育の理論と企画と原理のご案内と登録要領
新・日本語教育セミナー:表現活動の日本語教育の理論と企画と原理のご案内と登録要領
以下のような要領で、自律学習とオンライン交流会の形でセミナーを開催します。日本語教育に従事している人、日本語教育経験者、日本語教育志望の大学院生の方などで、趣旨に賛同する方の参加をお待ちしております。参加ご希望の方は、下の参加申込の要領で参加の申し込みをしてください。
NJ研究会
代表 西口光一
Ⅰ.開催趣旨
日本語教育の変革を実現するためには指導者一人ひとりが、
(1) 言語とコミュニケーションについての見方をクリティカルに反省し豊富化すること
(2) 第二言語の習得についての見方や習得支援の根本的なあり方を考えその原理を追究すること
(3) 企画・教材制作・教育実践からなる第二言語教育の総体を認識すること
(4) 高度な専門職として有効な企画のもとで責任ある実践をするという態度を身につけること
が必要です。本セミナーでは、表現活動の日本語教育を学び、また従来の日本語教育の内容と方法と表現活動の日本語教育を対照することを通して、上のような資質・能力の向上をめざします。
Ⅱ.参加申込と申込締切
https://forms.gle/6Nq5xnhP2Xq2cRt58 に行って、参加申込書兼ふり返りシートに必要な事項を記入し、ふり返りシートを完成して、8月20日(金)までに提出してください。この参加申込書兼ふり返りシートの提出をもって参加の申込となります。
参加申込をされ、参加が許可された方には、後日、各種の必要な案内をします。
※ 本セミナーについての問い合わせは、小原(obara2015@gmail.com)へ。
Ⅲ.参加募集人数等
10名程度
※ 応募者多数の場合は、提出をいただいた参加申込書兼ふり返りシート(上記URLから)の中の「参加動機」と下のⅥの「詳しい参加資格」を照らし合わせて、今回参加者を選考させていただきます。「専門職として成長したい!」と真剣に考えている方の参加申込をお待ちしております。
Ⅳ.参加費
無料。
※このセミナーは、NJ研究会のメンバー個々の自発的な意志に基づいて開催・実施されています。下のⅥの「主催者と参加者」をご参照ください。
Ⅴ.開催要領
□ 開催期間
2021年9月から2022年2月
□ 期間中のオンライン交流会
各月の第1日曜日の8:30-10:00am。ただし、1月を除く。
□ 教材
*(1)は各自で入手。(2)は配布します。
(1)『新次元の日本語教育の理論と企画と実践』(西口光一、くろしお出版、以降『新次元』と略す)
(2) 「表現活動主導の日本語教育」(西口光一、『思考と言語の実践活動へ』(ココ出版)のpp.1-18)
□ 目標
(1) 言語とコミュニケーションについての見方をクリティカルに反省し豊富化する。
(2) 第二言語の習得についての見方や習得支援の根本的なあり方を考え、その原理を追究して理解する。
(3) 企画・教材制作・教育実践からなる表現活動の日本語教育の総体を認識する。
(4) 第二言語の習得支援の方法を知り、その原理を理解する。
□ スケジュール
○第1クール
自律学習
『新次元』の
・はじめに
・プロローグ
・第1章 新たな日本語教育の構想−自己表現活動中心の基礎日本語教育−
オンライン交流会 2021年9月5日(日)8:30-10:00am
○第2クール
自律学習
『新次元』の
・第2章 新しい日本語教育実践の創造のための出発点1
−第二言語の習得促進要因の再考−
・第3章 新しい日本語教育実践の創造のための出発点2
−習得対象としての日本語と日本語の習得−
オンライン交流会 2021年10月3日(日)8:30-10:00am
○第3クール
自律学習
・「表現活動主導の日本語教育」(『思考と言語の実践活動へ』のpp.1-18)
オンライン交流会 2021年11月7日(日)8:30-10:00am
○第4クール
自律学習
『新次元』の
・第4章 言語の習得と集中的な習得支援−対話原理とテーマ中心の教育−
・第5章 総集的な習得支援と対話原理−個別のテーマを超えた習得支援−
オンライン交流会 2021年12月5日(日)8:30-10:00am
○第5クール
自律学習
『新次元』の
・第6章 産出活動と進んだ段階の習得支援
・第7章 文法と文法指導について
・終 章 全体の鳥瞰図としてのまとめ
・エピローグ
オンライン交流会 2022年2月6日(日)8:30-10:00am
Ⅵ.セミナーの背景など
□ セミナーの背景と問題意識
日本語教育、とりわけ入門・基礎から中級にかけての日本語教育は、既存の物の見方と考え方、及びそれを背景とした教材と教育方法に「囚われて」います。そして、そのような「囚われ」の中で指導者(教師)はノルマとして与えられた文型・文法事項を教えることや教科書の特定部分をこなすことにいつも汲々としています。そして、いっしょうけんめい創意工夫をして指導を展開しても成果が上がらないことにしばしば悶々とします。
現行の制度(物の見方や考え方や教材)とその中での実践は、学習者が日本語を上達させるという日本語教育の本旨を達成することができていません。そして、それだけではなく、現行制度のままでは指導者がいくら創意工夫をしたとしても日本語教育の本旨を達成することはできないでしょう。日本語教育に携わるものは、現行制度を変えて、わたしたちの実践を大きく変革することを真剣に考えなければなりません。日本語教育を変革するためには、現行制度の中でいかにうまくやっていくかの指導方法や指導技術ではなく、現行制度に代わる代替案とそれを担う優れた指導者の育成が必要です。
NJ研究会では、現行制度とその下での教育実践の代替案として表現活動の日本語教育を提案しています。表現活動の日本語教育の教育実践を支援するためのさまざまなリソースもすでに利用可能になっています。
□ 詳しい参加資格
以下の条件をいずれも満たす人。
(1) 日本語学校や大学等での日本語教育経験のある方や大学院生等で現在の日本語教育のカリキュラムや教材や教育方法等を知っている方
(2) 現在の日本語教育のカリキュラムや教材や教育方法等に限界を感じており、変革の方向を見つけたい方
(3) 日本語教育を自身のキャリアとして真剣に考え、今後もより高度な専門職として成長していきたいと考えている方
□ 主催者と参加者
本セミナーは、上のような背景と問題意識を共有するNJ研究会のメンバー個々の自発的な意志に基づいて運営・実施されます。主催のメンバーは「専門職として成長したい、専門職として一段上をめざしたい」という参加者を応援するサポーターです。しかし、このセミナーを通して参加者の成長を請け負うものではありません。成長するために努力し、専門職として自己変革を果てして、成長していくべきは参加者一人ひとりです。
主催者は以下のような役割をします。
1.各クールの最初に、勉強のためのオリエンテーション的な発信をする。
2.オンライン交流会を設定して、皆さんとともにそれに参加して、対話を深めます。
3.期間中に3回実施されるふり返りシートでの記述に対して必要に応じて助言等をする。(「助言を希望する」とされた方にのみ。)
※ NJ研究会については、https://www.mag2.com/m/0001672602 に行って、購読(無料)をお申し込みください。これまでの「NJ研究会フォーラム・マンスリー」を見ることができます。
主催代表者については、https://www.facebook.com/profile.php?id=100004549323842 や、
https://koichimikaryo.blogspot.com などをご参照ください。
2021年5月22日土曜日
日本語教師養成をめぐる議論の整理
間もなく始まる日本語教育学会(2021年5月22-23日)での会長挨拶にあるように、日本語教育学会としても「日本語教師の養成と研修」を学会が取り組む3大課題の一つにしています。課題2です。
課題1 : 日本語教育学の「学問的専門分野」としての体系的枠組みの構築
課題2 : 日本語人材・複言語人材育成のための日本語教師養成・研修の理念と
枠組みの再構築
課題3 : 多様なキャリア形成のための日本語教育内容の体系的再編成
この「日本語教師の養成と研修」というテーマ、すごくいろいろな観点や課題や制度などが複合してしまっていて、収拾がつかなくなっていると思います。このテーマが厄介なのは、(a)そもそも今「日本語教師」というような職業があるのかという問題(上の課題3に関係)と、(b)学問的な専門分野として日本語教育学というようなものがあるのかという問題(上の課題1に関連)、が根本的にからんでいるからです。しかし、その要因をからめると話がますます混乱しますので、ここではあえて「日本語教師という職業が世の中に立派にある」と仮に前提して話を進めます(A)。また、これも話をわかりやすくするために、大学教育の一環にある課程と民間の日本語教師養成課程を区別する議論をします(B)。そして、そうしたステップを踏んで最後に、日本語教師養成課程の教育内容についてわたしなりの提案をし、またこのテーマについて現在わたしたちが直面している課題を述べたいと思います(C)。
*ここでは、これも話を一旦わかりやすくするために、「職業としての日本語教師」をめぐる問題に限定します。
A.日本語教師の養成と研修をめぐって
1.「日本語教師という職業が世の中に『立派に』ある」との前提の帰結
(1)司法書士、美容師、保育士などと並んで日本語教師という職業が「認定可能な形で」存在する。
(2)日本語教師という仕事の「内容」や「方法」があり、その仕事を遂行するための「資質・技量・能力」などを特定することができる。
(3)経験を積むにしたがってその職業人としての「資質・技量・能力」は相応に向上するので、日本語教師の中で、新任、中堅、ベテランなどの成長過程がある。
(4)「…『立派に』ある」との前提なら、養成から成長過程まで含めて日本語教師を「再生産」すればいい。
このような状況があってこそ、日本語教師の養成と研修ということを実質のあるものとして議論できます。
2.上のような前提とその帰結があれば;
(1)日本語教師の養成としては、日本語教師が有している「資質・技量・能力」の基本的な部分を明らかにして、その育成をめざして養成が行えばよい。
(2)日本語教師の研修としては、適切な段階あるいは特定された役割に対応して「資質・技量・能力」を向上させる内容を明らかにして、それにふさわしい研修を実施すればよい。
B.民間の養成課程と大学の一環にある課程との対比
1.大学の教育課程に関するいくつかの前提の確認
(1)日本の大学では専攻(major)という制度がなく、基本的に「○○大学△△学部」というのが教育課程の基本単位となる。
(2)各「○○大学△△学部」では、その大学のその学部として達成しようとする教育の目標がディプロマ・ポリシーとして記述されている。
ゆえに、
(3)日本語教育の主専攻や副専攻を受講する場合でも、それはあくまで大学教育の一部として、あるいは当該の「○○大学△△学部」の教育の一環としてその内容が学修される。そして、その大学教育の全体は一般的には成人・社会人準備段階にある若者を対象に提供されることを前提としている。
2.民間の場合と大学の場合の大きな違い
(1)民間の養成課程は、基本として、大学の教育課程をすでに修了している(←「国家資格」の要件がそのようになっているので「大学修了」とした)成人・社会人を対象として、日本語教師という仕事をするために必要な「資質・技量・能力」に限定して提供される。つまり、「教養ある社会人・市民としての資質・能力・態度などはすでに身につけている人が対象」という前提。それに対し、大学での養成課程の場合は、Bの1の(3)のような事情で、「教養ある社会人・市民としての資質・能力・態度」を身につけることと並行して養成課程の教育が実施される。
(2)そのような事情なので、民間の養成課程の内容と大学での養成課程の内容は同じには設定できないと思います。他の言い方をすると、大学での養成課程の学修は大学教育のそれ以外の部分の学修と融合しているだろうということです。
3.民間の養成課程の教育内容と大学の養成課程の教育内容
(1) 2のような事情ですが、民間の養成課程の教育内容と大学の養成課程の教育内容を別途に策定するとまた混乱してしまうので、あえて一元的に設定するのが適当だろうと思います。また、いわば「本体」である大学教育を「日本語教員養成」ということに大きく偏重したものにならないように比較的スリムに設定するのがいいと思います。
(2) そして上の2のような事情をしっかりと認識して、大学での養成課程は大学のその他の課程とうまく融合させて、全体として養成課程の趣旨と大学教育としての趣旨が相互促進的に達成できるように企画するのがよいと思います。。
C.養成課程の教育内容についての提案と課題
このような理路で仮に作ってみたのが、大学における日本語教育人材の養成の教育内容の私案(https://koichimikaryo.blogspot.com/2021/05/blog-post.html)です。この私案の中のAからCまでが養成課程の核で、全30単位の内容となります。そして、この30単位で文化庁の「教育内容」の50項目をカバーすることができます。(従来の民間の養成課程の420時間分もこれで十分となります。)
一方で、Dはリベラルアーツ的な教育内容で、大学の専門課程の教育らしい内容が期待されています。この部分で、しっかりと日本語教育や言語教育一般や多文化共生などに関心をもつ「教養ある社会人・市民」としての資質・能力・態度を育成するのが大学教育の全体としてふさわしいと思います。また、Dの部分はその十分な専門的内容になりますので、大学院進学などさらなるキャリアの前進を考えている学生の「用意」にもなります。
最後に課題ですが、大きな課題は端的にAが成り立つための「日本語教師という職業が世の中に『立派に』ある」という前提がないことです。そして、さらに敷衍的に言うと、日本語教師という職業が世の中に立派にあるわけではないし、それとも関連して、そうした職業を支える「一定の基盤」となる日本語教育学というものも十分に成熟していないという課題もあります。「一定の基盤」と言ったのは、現在日本語教育学は豊かに行われていると思いますが、(a)基盤として決定的に重要な部分がそれに含めているか、それがターゲットされて進展しつつあるかという問題と、(b)豊かに行われている現在及び過去の日本語教育学でどの部分が「重要に」関連し、どの部分が「実用的に」関連しているかなどの関連の質的な違いも含めて関連の知識や知見が体系づけられているかという問題、があります。そして、間違ってはいけないのは、この日本語教育(の広い意味で)の実践と日本語教育学との関連の話と、日本語教育学の体系構築の議論は別物だということです。この2つもはっきりと区別して議論しないとわけのわからない「迷走」に入ってしまいます。
取り急ぎざざっと書いてみました。
皆さんから、ご意見やコメントなどいただければ。