養成課程の教育内容 ─ 大学編
□ 概要
☆ 以下は、大学教育の一環(一環であり一部)としての副専攻(一定の資質・能力の修得と資格の獲得をめざした26単位以上の課程)と主専攻(専門職としてさまざまな分野の日本語教育を担当することをめざす者を「養成」する課程、日本語教育の専門職としてのキャリア開発も視野に入れる)についてのプロトタイプ的な私案。
※大学の卒業単位数は128単位前後。
A: ベタに日本語教師養成。
B: 教育内容的な関心に応えるという意味で、実践のための基礎教養となる内容と科目。
C: 専門職としてより広くより深く日本語教育を考えるための知識と素養となる内容と科目。
D: 教員の研究分野を背景として、広く人文学や人文科学の視点から、日本語教育や言語教育について一層深く探究する内容と科目。あわせて、その後のキャリアの進展の用意として研究活動のための基礎の養成を含む。
※上のほうが実践・教育的で下に行くほどリベラルアーツ教育的になる。
※ ( )は文化庁の「教育内容」での番号。
※AからCで必須の50項目をカバーする。
(1)副専攻
AからCまでで、15科目30単位。(文化庁の副専攻としては「13科目26単位以上」となっている。)
(2)主専攻
AからCまでの15科目30単位を含めて23科目45単位以上。
※学部の学修としては学部のディプロマ・ポリシーの達成をめざした諸科目がその学部の大学教育となる。主専攻はその一環・一部となる。
□ 領域と科目
A.実践科目
(a)日本語教育概論① ─ 総論
(1)-(3)
(20)-(24)
(32)-(34)
(b)日本語教育概論② ─ 教材とカリキュラム
(25)-(26)
○各学習段階の日本語教育
*ここに、「言語即物主義の日本語教育」を自覚させるために表現活動の日本語教育を入れる。
(c)日本語授業研究① ─ 総合日本語と学習者別日本語
(31)目的・対象別日本語教育法
(35)日本語教育とICT
(36)著作権
(d)日本語授業研究② ─ 授業計画と教育実習
(27)授業計画
(28)授業実習
(30)授業分析・自己点検能力
B.基礎専門科目(or実践基礎科目) ─ 言語の構造
(a)日本語の文法
(39)と(43)
(b)日本語の音声
(40)
(c)日本語の文字・表記
(41)
(d)日本語の形態・語彙・意味
(42)と(44)
(e)言語学
(37)一般言語学
(38)対照言語学(日英対照言語学)
○コミュニケーションの能力
(46)-(50)
C.専門科目(or専門教養科目)
1.言語と社会
(a)日本語教育の歴史と政策
(4)と(7)
*(5)言語政策(日本の言語政策と外国人政策)
(b)社会言語学
(8)と(45)
(c)言語政策(さまざまな国の言語政策と言語・民族・社会)
(9)言語政策と言葉
(13)多言語・多文化主義
(d)言語とコミュニケーション
(10)-(12)
2.言語と心理と学習
(e)認知と言語と心理
(14)談話理解
(18)異文化受容・適応
(19)日本語の学習・教育の情意的側面
(f)言語の学習と習得
(15)言語学習
(16)習得過程(第一言語・第二言語)
(17)学習ストラテジー
D.高度専門科目(or高度専門教養科目)
(a)言語行為の探究
(b)第二言語習得の探究
(c)学習の探究
(d)ことばの探究
(e)人権・平等等の探究
(f)人類と地球の現状の探究
(g)人文学/哲学・思想の探究
さまざまなことがバランス良く配置された案だと思います。D.の「(e)人権・平等等の探究」と「(f)人類と地球の現状の探究」はすこぶる重要だと思うのですが、言語教育にとってなぜこれが大切なのかということを、学生のみなさんに伝えるのに何をすべきか、いろいろと考えさせられます。カリキュラムや教材への反映はもちろんありますが、関連することに触れる場面が政策を含め、教室内外の様々な場面に絡んできます。これを洗い出して整理してみるのも価値あることかなと思います(と言うだけでなかなかできませんが)。モラルや価値観が絡む問題だけに、知識として教え込むようなことではないように思いますし、共感性の問題だったりもします。これをどう教員養成カリキュラムに取り込むのか、難しい問題ですね。もちろん、共感性があっても知識が足りないということもありますので、知識として、例えば様々な理不尽な現状を理解するということも必要だとは思いますが。 (松下達彦)
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