オンライン日本語教育(オンライン日本語レッスン)の一提案 ─ 反転指導のすすめ
現在、オンライン日本語教育(個人指導)が広く行われています。皆さん、従来の教材を使ってどんなふうにやってるんでしょうねえ。今回は、『NEJ ─ テーマで学ぶ基礎日本語』(くろしお出版)を活用した、反転指導でのオンライン日本語教育の提案です。□背景、□レッスン開始まで、□レッスンの方法、□コツ、の4段階に分けて要領を解説します。
□ 背景
1.反転指導
反転指導(flip learningあるいはflip instruction)とは、学習者があらかじめに課題をやっておいて、その上で対面(オンラインでも!)の授業をするという形で教育成果をあげようとする教育方略です。
2.自己表現活動中心の基礎日本語教育の教育方略
※ 従来の初級日本語教育が入門からスタートするのと同じく、基礎日本語教育も入門からスタートします。
(1) 自己表現活動中心
「自己表現活動中心」というのは、ただ文型・文法事項の知識を積み上げる方略ではなく、一方で、文型・文法事項の知識を積み上げながら実用的なコミュニケーションができるようにしようという方略でもありません。むしろ、自分をめぐるいろいろなテーマで日本語で話せるようになることをコースの目標とする教育方略です。もちろん、「話せるように」には、「聞いて理解できるように」と「会話できるように」も含みます。従来の初級日本語教育は、「文型・文法事項か!」と「実用的なコミュニケーション」かという古い二者択一の間で逡巡しています。自己表現活動中心の方法では、いろいろなテーマで日本語が話せるようになることと、それと並行して文型・文法事項や語彙を体系的に習得できることを実現した教育方略です。
自己表現活動中心の基礎日本語教育の教育内容・教育目標をごくわかりやすく言うと、「日本語でおしゃべりができるようになる!」です。そして、その教育方略に基づく学習と教育実践を支える教材がNEJです。
・自己表現活動中心の基礎日本語教育とNEJ一般については、http://nej.9640.xn--jp-xd4a/、http://nej.9640.jp/sample_honsatsu.html を参照。
・自己表現活動中心の基礎日本語教育で扱っているテーマと、それに伴う文型・文法事項と語彙については、NEJのシラバス、http://nej.9640.jp/sample/contents を参照。
(2) 各ユニット
自己表現活動中心の基礎日本語教育は、基礎前半で12のテーマ、基礎後半で12のテーマで日本語を勉強します。着実に勉強した学習者は、ユニットの終わりにはそのユニットのテーマについて自分のことを話せるようになります。また、そのテーマについての先生の話も理解できるようになります。そして、そのテーマで会話もできるようになります。24のテーマについては、上のシラバスをご覧ください。
□ レッスン開始まで
1.教科書
『NEJ ─ テーマで学ぶ基礎日本語』(https://www.amazon.co.jp/NEJ:-Approach-Elementary-Japanese-<vol-1>-テーマで学ぶ基礎日本語/dp/4874245501/ref=tmm_pap_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=1627519619&sr=1-2)を入手して、上のhttp://nej.9640.jp/sample_honsatsu.html や http://nej.9640.jp/sample/contents なども参考にして、自己表現活動中心の基礎日本語教育の教育方法や教材を研究する。
2.オンラインインタビューとオリエンテーション
・学習希望者を見つけたら、インタビューをして、NEJのどのユニットからスタートするのが適当か判断する。
・学習者に、NEJを入手することを指示する。その際に、NEJのpp.xii-xiiiの「For the Learners」(http://nej.9640.jp/sample_honsatsu.htmlの7ページ目)を見せながら、NEJを活用した自己表現活動中心の基礎日本語教育について説明する。また、http://nej.9640.jp/index.html#音声ダウンロード に音声ファイルがあるので、その場でダウンロードを指示する。
□ レッスンの方法
※ 少し既習者で、ひらがなは概ね知っていて、ユニット2から始めるのが適当と判断した場合を例として。
○ 1回目のレッスン
各自で工夫して、ユニット2をオンラインで学習・指導してください。
○ 2回目のレッスン ─ 反転指導(flip learning、flip instruction)
・家庭学習指示 ※1回目のレッスンの最後に!!
ユニット3のナラティブAの1と2(上のhttp://nej.9640.jp/sample_honsatsu.htmlの11ページ目で参照できます)を、(1)注釈なども参考にしながら自分で勉強する、(2)オーディオを聞きながらナラティブをまねる練習をする、ことを指示する。
・レッスン(ナラティブを活用した学習を中心に)
学習者はテクストを開いておく。必要に応じてテクストを見てもよい。
テクストとオーディオの両モードでナラティブを提示しながら、(1)ナラティブの朗唱練習、(2)ナラティブの内容についてのQ&A、(3)ナラティブの内容と同種のことについて学習者の話を引き出す、(4)ナラティブのテーマについて教師の話をする、などの学習活動をする。Section3のUseful Expressions(上のhttp://nej.9640.jp/sample_honsatsu.htmlのpp.16-18で参照できます)なども適宜に活用する。
※ https://www.dropbox.com/.../unit03-A1%EF%BC%88%E6%BC%A2... のようなPPTを準備すると、すばらしくレッスンが運営しやすいです。教科書に出ているイラストはすべて、『NEJ 指導参考書』(くろしお出版)付属のCDROMに入っています。
・次回レッスンに向けた家庭学習の指示
(1) 今回のレッスンで話したことをもとに、ナラティブをまね・参考にしながら、自分の場合のエッセイをワープロ(ワード)書く。そして、2−3日後に、メール添付ファイルで教師に提出。
※ 表記は、漢字仮名交じりでも、ひらがな中心でも、ひらがなとローマ字交じりでも、ローマ字でも、よい。その学習者のやりやすいように。
※ 提出されたエッセイは、次のレッスンまでに教師が添削。添削の方法は、間違いに取り消し線、「→」の後ろに赤で適切な日本語を書く、でよい。必要に応じて、行間にフィードバックも入れる。そして、レッスンの1日前までに学習者にメール添付ファイルで返却。
(2) ユニット3のナラティブBの1から3を、(1)注釈なども参考にしながら自分で勉強する、(2)オーディオを聞きながらナラティブをまねる練習をする、ことを指示する。
○ 3回目以降のレッスン
・エッセイの発表と適宜のQ&Aやフィードバック
・レッスン(ユニット3のナラティブBの1から3)
・次回レッスンに向けた家庭学習の指示(ユニット4のAの1と2)
□ コツ
上のレッスンの下の※でhttps://www.dropbox.com/s/wzkrkhciut5ljyz/unit03-A1%EF%BC%88%E6%BC%A2%E5%AD%97%E4%BB%AE%E5%90%8D%E4%BA%A4%E3%81%98%E3%82%8A%E7%89%88%EF%BC%89.pptx?dl=0 を紹介しました。これは、ナラティブの1文づつ対応で作成したPPTカミシバイです。PPTカミシバイを作成すると、すばらしくレッスンが運営しやすくなります。自分でイラストを見つけて、もっと素敵なPPTカミシバイを作ることもできると思います。