2019年12月15日日曜日

「日本語教師」国家資格は既定の路線!?

 「日本語教育能力の判定に関する報告(案)に対するパブコメが一昨日(12月13日(金)に締切となりました。「ぜひパブコメをしてください。パブコメの数が本件についての国民の関心のバロメーターになります」と喧伝していた文化庁のほうにはかなりの数のコメントが寄せられたことと思います。(しかし、「パブコメの数が国民の関心のバロメーターになる」なんて、まじめにコメントするモチベーションが下がりますね。「コメントの内容を文化庁はちゃんと読んでその後の小委員会での議論に反映してくれるのかよー?」との疑問が湧きます。)
 この記事では、今回の「騒動」のタネ明かし!?をしたいと思います。

1.日本語教育に従事する人の「資格」について
 文化庁の報告(案)ではわかりにくいですが、今回の報告(案)の主眼は、

(1)従来の日本語教育能力検定試験に代わって「新試験」を設置する。※「新試験」の内容は2018年3月に出た「在り方について」の50項目を反映したものと報告(案)では説明されています。これって、これまでの検定試験といっしょです。どうなっているのでしょうね!?
(2)その新試験合格と、実習修了と、大卒(学士)の3点をもって、「公認日本語教師」という国家資格(名称独占)として認定する。※「名称独占」というのは、「その資格を持っている人だけがその名を名乗ることができる」ということです。他の国家資格として「業務独占」というのがあって、こちらの制度だとその資格がなかったらその仕事ができないこととなります。「公認日本語教師」の資格は「名称独占」です。ちなみに、「公認日本語教師」という名称はいかにも不細工なので、わたしはパブコメで「日本語インストラクター」という名称を提案しました。さてさて、どのような名称になるでしょうか!?
(3)検定合格者あるいは養成課程・養成講座修了者という従来の日本語学校での教員採用基準を上の「公認日本語教師」変えるよー!ということです。現在の日本語学校設置の「規制」となっている法務省の告示基準がそのように変更されることが予定されているようです。

 「規制」という観点から見るのが話が早いと思います。(2)の「名称独占」の国家資格は、それ自体は日本語を教える仕事をすることに関して何の「規制」にもなりません。しかし、(3)のように法務省の告示基準が変更されることで、「規制」となります。つまり、新しい資格がスタートし法務省の告示基準が変更されると、(a)日本語学校は「公認日本語教師」でないと採用することができなくなる、(b)「公認日本語教師」でないと日本語学校で教師の仕事ができなくなる、ということです。そんなわけで、今回の報告(案)の中心的な趣旨は、「日本語学校の先生はみんな『公認日本語教師』にしよう!」ということです。

2.新制度で日本語学校の教育はよくなるのか、日本語学校の教師の待遇は改善されるのか
 まじめな「論点」としては、検定試験というのがいわば国家資格に置き換わること、及び、日本語学校の先生はやがてみんな「公認日本語教師」となるというこの新制度が、果たして、(ア)より優秀な人を日本語教育に呼び込んで優れた教師として養成され、(イ)日本語学校の教育の質が向上し、また、(ウ)その人たちも国家資格にふさわしい待遇がされるか、という問題です。報告(案)はこの部分について「楽観」しているように見受けられます。というか、…。

3.「日本語教師」国家資格は既定の路線
 報告(案)には明記されていませんが、「日本語教師」国家資格は、日本語教育推進法第21条で「日本語教師の資格に関する仕組みの整備」ということが謳われていて、今回の報告(案)の内容は、その具体化という話です。そして、現在、日本語教育能力検定試験があるにもかかわらず「日本語教師の資格に関する仕組みの整備」と言われると、検定試験よりもう一段上の国家資格(の中で軽いほうの名称独占)となるのは、いわば当然の帰結です。文化庁の担当者や同小委員会の先生方の判断は、「日本語教育に追い風が吹いている今のこのチャンスを逃したら当分は「格上げ」などできなくなる。だから、「格上げ」はぜひ実現したい!」というとても「戦略的な」判断をされているのだと推察します。

ということで国家資格は早晩実現されるだろうと思います。

4.今回の制度改革で日本語学校の教育の質は向上するのか、日本語学校の教師の待遇は改善されるのか
 日本語教育に関わる当事者としての関心はこの2点です。今回の制度改革でこのあたりがよくなっていくのか、わたし自身は、楽観していいのか、悲観的にならざるを得ないのか、何とも言うことができません。ただ、言えることは、日本語学校の教育の質の問題は、教師の質の問題ではなく、むしろ、教育内容と教育方法のパラダイムの問題だということです。現状のカリキュラムと教材でやっていては、誰が教育の実施にかかわっても、大きな質の改善は望めないと思います。今回の制度改革で、「おもしろい!」人が日本語学校に入ってきて、日本語学校の教育を抜本的に革新するというような流れになれば、おもしろいなあとは「期待」しています。


 逆に、日本語学校以外では、企業であれ自治体等であれ、「公認日本語教師」でなくても採用することができます。しかし、日本は「忖度」の社会なので、もしかしたら、企業や自治体


1 件のコメント:

  1. 西口先生
    この問題、無関心ではいられなくて、私もいろいろ考えたり、投稿したりしているのですが、西口先生の分析の射程の深さに、この問題を考える視野が広がったような気がします。文の最後が途中で切れているようです。

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