2020年4月18日土曜日

第3章 (表日)SAL​​​​​​​​​​​​​​における支援

第3章 (表日)SAL​​​​​​​​​​​​​​における支援

 表現活動中心の日本語教育については西口(2015)で詳細に論じていますし、先生方におかれましてはNEJやNIJなどもしっかりと「にらんで」いただいて、知っていただくこととして、ここでは(表日)SAL​​​​​​​​​​​​​​における支援の考え方について話します。
 この話をするために下のようなPPT資料を作成しましたので、それを横に置いて以下の説明をご覧ください。

1.基本原理
 教育内容とねらいを示す表現活動中心の日本語教育新たなインストラクション(学習指導)!?の方略であるSAL​​​​​​​​​​​​​​も、基本原理はクラシェン×バフチンです。ですから、それにふさわしい形で、SAL​​​​​​​​​​​​​​での支援も、一方でSAL​​​​​​​​​​​​​​らしく!、行わなければなりません。

2.自律学習(autonomous learning)ステージでの支援
 SAL​​​​​​​​​​​​​​のautonomous learningの部分は、バフチン的にデザインされたクラシェン的な習得の機会を提供しています。そして、この部分は、PPT資料の三角錐のB(言語技量の開発)の部分に焦点化した学習となります。

(1)学習の各ステップは無理のない一連のステップになっている。
そして、各ステップでは、
(2)適切な言語事項で構成された言葉遣いで編成された「意味ある」ディスコースを提供している。
(3)そのディスコースに対して補助的に語彙の注釈や文法の「よく分からない」に対処するための情報を十分に提供している。 ※SAL​​​​​​​​​​​​​​では、NEJの「Gist of Japanese Grammar」以上の文法説明を用意しています。

 ですから、autonomous learningの部分では、ModuleやAssignmentでの指示に従って、提供された注釈や文法説明なども参考にして、しっかりと勉強すれば、相当程度そのテーマについての言葉遣いを蓄積して、そのテーマについての基礎言語技量を形成することができることが見込めます。学習上の「よく分からない」も提供されている情報をちゃんと見れば!解決するはずです。
 ですから、このステージでの支援は、(a)しっかり「自力」を発揮せよ!(自律学習支援)、と、(b)その「よく分からない」の答えはここに書いてある!(自律学習支援)、の2つが基本となります。
 こうした支援は、しなくても学習者は順調にautonomous learningを進めているというのが望ましい状況です。(a)や(b)が頻繁になってしまう場合、それは現在の取り組んでいる学習がその学生の「習得に適切な内容」を超えているということなので、学習ステップをバックすることを指導しなければなりません。それも重要な適切な支援です。

3.学習者のパフォーマンスに関わる支援
 SAL​​​​​​​​​​​​​​では、学習の節目節目で、ワークシート課題の提出やエッセイの作成・提出を求めます。
 支援の方法という関心からは、まずは、どのようなメディアや方式でこうしたパフォーマンスを「提出」させるのが日本語習得支援の一環として有益で、支援の実施の観点からも便利で、有効な支援ができるかを検討・研究しなければなりません。学生相互でのpeer feedbackなども支援のオプションとして検討・研究の対象としていいと思います。
 この部分での学習と支援では、PPT資料の三角錐のA(言語パフォーマンスの形成)が注目されており、その学習と支援の趣旨は、B(言語技量の開発)に関心を置きながらのAに関わっての学習指導です。
 そして、その際に、そうした活動に付帯して、C(言語知識の習得)やD(言語システムの理解)も支援の「俎上」に上がってくるかもしれません。多かれ少なかれ上がってくるでしょう。そして、クラシェン×バフチンの原理でいくと、そのような場合の支援は「速やかな『解決』を旨とする」となります。なぜなら、CやDの部分は、日本語上達の「周縁部の構成要素」だからです。これまでのパラダイムでは、第二言語の習得においてCやDは重要な部分と位置づけられてきました。しかし、クラシェン×バフチンを基本原理とする表現活動中心の日本語教育と(表日)SAL​​​​​​​​​​​​​​では、それは「周縁」となります。(このあたりは、西口(2015)をご参照ください。)

4.その他の支援
 正確な用語を忘れましたが、昔Ellisが、授業活動は「教えること」の側面と「実際の相互行為」の側面があると言っていました。PPTの三角錐と絡めて言うと、「教えること」の側面は、CやDに関係することです。そして、「実際の相互行為」の側面は、B、あるいはBに関心を置きながらのAとなります。
 SAL​​​​​​​​​​​​​​では、(ネット上でない)直接的な対面授業も支援方法の一つに入れていいと思います。しかし、ぜひ必要な直接的な対面授業の部分以外は、ネット上でやネットを介しての支援となります。
 直接的な対面授業では、クラシェンの言う「習得」を促進する授業活動を実施することは容易にイメージすることができます。そして、クラシェン×バフチンの原理からはそれは大いに推奨されます。
 ここで、提案したいことは、ネット上やネットを介してという場合でも、「習得」の促進をねらった「支援(活動?)」をしてほしいし、それは十分にできるということです。あるいは、一般論の形で言うと、ネットを介した支援はDやCの部分だとあらかじめ規定してしまわないで、もっと広い目線や観点や洞察でネットを介した支援のポテンシャルを研究・検討・創案し、多様で柔軟で豊かな支援を開発してほしいということです。


【PPT資料】
https://www.dropbox.com/s/fwyjenjnh8k3gte/%E3%83%91%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%BD%A2%E6%88%90%E3%81%A8%E8%A8%80%E8%AA%9E%E6%8A%80%E9%87%8F%E3%81%AE%E9%96%8B%E7%99%BA%E3%81%AE%E9%80%A3%E5%8B%95.pptx?dl=0

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