2018年12月8日土曜日

日本語教育実践の再生:表現活動中心の日本語教育を創造するNEJとNIJ ①

♡1 教育の趣旨と内容① ─ ねらいと目標

 表現活動中心の日本語教育は、口頭と書記の両様にわたる基幹的な日本語表現技量を習得することをねらいとしています。そして、そうしたねらいを達成するために、基礎日本語教育中級日本語教育の2段階に分けて、各段階でねらいと目標を定めて、教育を企画しています。以下では、表現活動中心の日本語教育の基礎日本語教育と中級日本語教育のそれぞれについて、ねらいと目標と教育内容について説明します。順番として、まず、中級日本語教育から話をします。中級日本語教育のねらいと目標が表現活動の日本語教育の全体がめざす最終的なねらいと目標になるからです。つまり、最終の到達点から出発点の方にさかのぼるような形で話を進めます。
※ KGIは、Key Goal Indicator(目標達成指標)の略です。

Ⅰ.テーマ表現活動中心の中級日本語教育の趣旨

□ ねらい
 自己をめぐるさまざまなテーマ、及び現代社会の諸側面とそこで生きることに関するさまざまなテーマについて、話すことと聞いて理解することとやり取りすることの口頭言語の諸モードと、書くことと読んで理解することの書記言語のモードで、さまざまな言語活動に従事できる言語技量を育成する。また、そのような言語活動に関与する語や言葉遣いに習熟し、合計約400字の漢字を習得しそれらに実用的に習熟する。

□ 目標
 コース修了時に、学生は以下の言語活動ができるようになり、以下の言語事項と言語技能を習得し習熟している。
※総括的評価においては、1の言語活動のパフォーマンスを評価材料とし、(1)そのパフォーマンスが達成されているか否かを判定し、さらに、(2)そのパフォーマンスにおいて2の言語事項や言語技能が適切に実現されているか否かを判定する。
1.言語活動に関する目標(KGI-1)
(1) 口頭日本語(KGI-1.1)
 自己をめぐるさまざまなテーマについて、話したり、相手の話を理解しながら聞いたり、相互行為的に会話をしたりすることができる。また、現代社会の諸側面とそこで生きることに関するさまざまなテーマについて、話したり、相手の話を理解しながら聞いたり、ディスカッションしたり、インフォーマルなプレゼンテーションをしたり、そうしたプレゼンテーションをおおむね理解したりすることができる。
(2) 書記日本語(KGI-1.2)
 上記のようなさまざまなテーマについて、適宜にスマホなどを利用しながら、1時間で、約400字の漢字を用いながら、A4で1枚程度(800字程度)のエッセイを書くことができる。また、そのようなエッセイを読んでおおむね理解することができる。
2.言語事項と言語技能に関する目標(KGI-2)
(1) 言語事項(KGI-2.1)
 基礎段階の文型・文法や語彙などに十分に習熟するとともに、テーマ表現活動に関わる言葉遣い、及びそこで行使される文型・文法と語彙等を新たに学習しそれらに習熟する。※前者はN4(あるいはCEFRのA2)水準の内容、後者はN3(あるいはCEFRのB2.1)水準の内容となる。
(2) 音声言語技能(KGI-2.2)
 基礎的な音声技能(発音と基本的なアクセントパターン)の課題を克服して十全に習得するとともに、発話やディスコースのプロソディ特性に注目し習熟する。※同上。
(3) 文字言語技能(KGI-2.3)
 基礎的な書記技能(ひらがなとカタカナの認識と書き方)の課題を克服して十全に習得するとともに、基礎300字の漢字と新たに学習する約100字の漢字の計約400字について、実用的に習熟する。
※「実用的に習熟する」とは、学習した語の中で遅滞なく認識できて、ワープロ入力で正しい漢字を選択できるようになることと、提示された漢字語を正しく再生できること。

□ 教育内容
 以上のようなねらいと目標の下に、テーマ表現活動中心の中級日本語教育を企画した。同教育企画で扱われる具体的なテーマと文法については、https://drive.google.com/open?id=1xrqTeBGk1F5037KH6OVzjCc5lFbq4LWg)を参照。


Ⅱ.自己表現活動中心の基礎日本語教育の趣旨と教育企画

□ ねらい
 自己のさまざなな側面に関するテーマについて、話すことと聞いて理解することとやり取りすることの口頭言語の諸モードにわたる口頭日本語の基礎技量を育成する。また、漢字300字を含む基礎的な書記日本語の知識を習得し、基礎的な書記日本語技能を習得する。

□ 目標
 コース修了時に、学生は以下の言語活動ができるようになり、以下の言語事項と言語技能を習得している。
※総括的評価においては、1の言語活動のパフォーマンスを評価材料とし、(1)そのパフォーマンスが達成されているか否かを判定し、さらに、(2)そのパフォーマンスにおいて2の言語事項や言語技能が適切に実現されているか否かを判定する。
1.言語活動に関する目標(KGI-1)
(1) 口頭日本語(KGI-1.1)
 自己のさまざまな側面に関するテーマについて、話したり、相手の話を理解しながら聞いたり、相互行為的に会話をしたりすることができる。また、インフォーマルなプレゼンテーションをしたり、そうしたプレゼンテーションをおおむね理解したりすることができる。
(2) 書記日本語(KGI-1.2)
 上記のようなさまざまなテーマについて、適宜にスマホなどを利用しながら、1時間で、約300字の漢字を用いながら、A4で2/3枚程度(600字程度)のエッセイを書くことができる。また、そのようなエッセイを読んでおおむね理解することができる。
2.言語事項と言語技能に関する目標(KGI-2)
(1) 言語事項(KGI-2.1)
 自己表現活動に関わる言葉遣い、及びそこで行使される基礎的な文型・文法や語彙等を習得する。
(2) 音声言語技能(KGI-2.2)
 基礎的な音声技能(発音と基本的なアクセントパターン)を習得する。
(3) 文字言語技能(KGI-2.3)
 ひらがなやカタカナで表記される学習した語彙や表現を認識することができる。基礎300字の漢字を実用的に習得する。
※「実用的に習得する」とは、学習した語の中でおおむね認識できて、ワープロ入力でおおむね正しい漢字を選択できるようになることと、提示された漢字語をおおむね正しく再生できること。「おおむね」とは70-80%程度。

□ 教育内容
 以上のようなねらいと目標の下に、自己表現活動中心の基礎日本語教育を企画した。同教育企画で扱われる具体的なテーマと文型・文法については、http://nej.9640.jp/sample/contents)を参照。

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