2018年4月22日日曜日

羅針盤:「何とかしなきゃ」と思うべきは学生!(201608)

普段フツーに日本語のセンセをしているわたしは、講師室に集まる先生たちの様子を日常
的に目にし、話を耳にします。そんなときに、「ふむふむなるほど」と合点することもいろ
いろあるわけですが、「ええっ? なんか変!」と思うこともあります。

先生たちの間で頻繁に話題になるのが課題を抱えた学生、もっとわかりやすく言うと学習
が遅れている学生です。先生たちは、学生の名前を挙げて、「あれができない」「これがま
だ身についていない」「困ったもんですね」「どうすればいいのでしょう」「そうですねえ…」
との会話がしばしば延々と続けられます。このような様子を見、会話を耳にして、わたし
はいろいろなことを考えてしまいます。

まず第一に感じるのは「えー、なぜ、先生たちがそんなに大騒ぎしてるの? できなくて困
って大騒ぎするべきは、学生本人でしょう!」との思いです。こういう課題のある学生に
かぎって、ご本人はどうかすると「平気の介」で、遅れていることを何とも思っていない
し、何とかキャッチアップしようなんてこともちっとも思っていない。「大騒ぎするのは先
生ばかり」です。

次に感じるのは、「大騒ぎする時間があるなら、何とかしてあげたら?」です。ただし、
「何とか」というのは補習授業をしてあげるということではありません。『呼び出し自習と
結果見せ』です。簡単に言うと、呼び出して「赫々然々の課題をここでしなさい。できる
ようになったら申し出なさい。そして、結果を見せてください」というものです。例えば、
NEJで言うと「ユニット△のナラティブをすらすら言えるようになるまでオーディオを
聞いて練習しなさい。言えるようになったら申し出なさい。そして、先生の前ですらすら
っと朗唱してください」というようなものです。他の例として中級の学生であれば「この
20個の漢字語をすらすら書けるようになるまで練習してください。できるようになったら
申し出なさい。そして、わたしの目の前でそれらを書いてください」です。このように『1
回1課題』というような具合で、自助努力をさせるのがいいと思います。厳しくやるなら
「できるようになるまで帰さない!」「毎日、来て、やれ!」くらいの迫力で迫るとよいと
思います。

さて、最後に感じること。やはり、重要なことは、そのような課題のある学生をつくらな
いことです。そのためには、(1)細い道ながらも重要事項をうまく含んでいて大部分の学習
者が着実に達成できる「道」を用意すること、(2)その「道」では明確なステップがあって
そのステップで、進捗をよくモニターし、遅れが発生した場合には即座に『呼び出し自習
と結果見せ』などを実施すること。そのような教育の計画と、実施上でのモニターと機動
的な対応が重要であると思います。今学期は、10何年かぶりに日本語研修コースを担当し
ていますが、コーディネータとして、この(1)や(2)のことを改めて考えさせられています。

教師ばかりが学生の学習の進捗にやきもきしている状況は、とても「歪んでいる」感じが
します。第一の基本は、学習者に「勉強するのはあなたたちだし、その成果を得るのもあ
なたたちだ」と十分に伝え理解させることです。こんなことをあれこれ考えていると、第
二言語教育のキモは「第二言語の着実な発達の経路を巧みに企画すること」だと改めて思
います。

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